島の自然と都市の文化、対照的なライフスタイルを同時に手に入れる暮らしを提案している「島&都市デュアル」。7月6日には渋谷キャストで「DUAL LIFE FES」と銘打ったイベントを開催。その様子を、オープニングイベントについて紹介した前回に引き続き、洲本市ナビゲーターの藤田祥子がレポートします。4市から出店してくれた指折りのショップによるマーケットや、デュアルライフ実践者たちのトークセッションはどんな感じだったのでしょうか?
時折小雨がぱらつくあいにくの天気のなか、ランチタイムに賑わいをみせたのがキッチンカーとマーケット。マーケットには4市あわせて、10以上のブースが立ち並び、その隣には神戸市・芦屋市・淡路島それぞれの自慢のフードを提供する3台のキッチンカーがずらり。
芦屋市のキッチンカーでは、人気のカフェの看板メニューのミートソースパスタと、芦屋らしいおしゃれなエルダーフラワーのソーダ割りが提供されました。
神戸市のキッチンカーの看板メニューは、精肉店とパン屋さんが特別タッグをくんだカスクートと自家焙煎コーヒー。ランチを買い求めるビジネスマンで列ができています!
淡路島のキッチンカーでは、海と山の幸を味わえる真鯛のココナッツカレーと鹿のキーマカレーを販売。島ならではの個性が感じられると、こちらも次々に来場者が訪れていました。
おいしいキッチンカーの隣には4市の産品が買えるマーケット。レポートの前半でも紹介した芦屋市の学校給食をまとめたレシピ本が、多くの人の注目を集めていました。
さらに古事記に記された国生み神話の地としても知られる淡路島のブースでは、写経ならぬ写古事記のワークショップを開催。さまざまな視点からそれぞれの土地の魅力に触れられる時間となりました。
イベントを結んだのは、デュアルライフを実践する3人のトークショー。秋田と東京の二拠点生活を送る武田昌大さん、淡路島在住の富田祐介さん、神戸市在住の鶴巻耕介さんが、それぞれのリアルなデュアルライフについてトークを展開しました。
武田さんは、地元でもある秋田を盛り上げるべく東京からUターン。誰もが気軽に第二の故郷を共有できる「シェアビレッジ」という取り組みを主宰しています。
「まずは気軽に帰れる場所をつくること。デュアルライフの第一歩目はそこからです」と話す武田さん。運営を行う「シェアビレッジ」の活動も、島&都市デュアルが提案するコンセプトと近いものを感じられます。
「シェアビレッジ」は、地方の古民家を「村」に見立て、年貢とよばれる会費を納めることで「村民」として、好きなときに自分の村へ行って泊まることができる仕組みです。2015年にスタートした当初の「村」の村民は、今や2000人以上になっているのだとか。都市部で村民同士が集まる飲み会、名付けて「寄り合い」も定期的に開催されているそうです。
「寄り合いに参加することで、一緒に村に帰る仲間ができます。繰り返すことで現地にも仲間ができていって、村が居心地のいい『帰る場所』となる。僕の場合は東京と秋田、両方があることでバランスよく生きていけていると感じています」。
島&都市デュアル暮らしツアーズの編集長でもある富田祐介さんは、2011年に淡路島に移住。現在は淡路島を拠点に、新規事業や既存事業の戦略づくり・企画提案を行う企画会社「シマトワークス」を主宰しています。
「僕の場合は田舎でスローライフがしたいというよりも、『淡路島のほうがワクワクする仕事ができる!』という実感があって移住しました」と富田さんは言います。
島に移住するとなると、「住み心地は良くても仕事のことが不安」という人も多いようですが、富田さんの場合は、淡路島に住んでいることを活かしながら島のヒトやモノを資源として活用して、自分ならではの仕事を開拓したのだそう。富田さんらしい島での仕事の話が聞けました。
「独立して数年が経ち、島内の仕事と島外の仕事が半分ずつくらいの割合になっています。島内の仕事は自分たちの暮らしを豊かにするための仕事と考えています。金額が安くても、お裾分けや物々交換も報酬として考えて、仕事をお受けします。我が家の冷蔵庫は顔のわかる人の素材であふれています。あの人にいただいた玉ねぎ、お味噌、なんて顔を思い浮かべながら食事していて、それだけで幸せな気分になります。反対に、島の外は外貨を稼ぐというイメージです。でも、どちらの仕事も基本的に“ワクワク”できるかどうかを大切にしています。なぜなら、ワクワクできるかどうかは、僕にとって、とても重要な人生のファクターだからです。「働く」と「生きる」と「ワクワクする」がバランスよくある毎日を送れているのは、きっと島に暮らしているからだろうなと感じています」。
つるまき農園の園長・鶴巻耕介さんは、神戸市郊外の里山に移住して、農作業と地域活動をしながら暮らすデュアル人です。
「都会でサラリーマンをしていた僕ですが、昔から憧れていたのはパン職人や革細工職人といった、自分で何かを生み出せる人でした。サラリーマンを辞めて里山に移住したいと思った時に、メールや電話で仕事をしていた僕が、一つの職で生きていけるかという不安は、正直ありました」と言います。
そんな鶴巻さんが考えたのが「現代の百姓」になること。100の知恵と技を持つのが百姓であるなら、これまでのスキルも生かして百姓になろう!と志したそうです。今では農業はもちろん、茅葺屋根の葺き替え現場で技を学んだり、会社員のころのスキルを生かして学生インターンをコーディネートしたり多様な仕事人に変身。その姿はまさに「現代の百姓」です。
「デュアルライフ」という一言では片付けられない、三者三様の個性的で多様な考え方と暮らしぶりが浮き彫りになったトークセッションに、来場者も興味津々。真剣に耳を傾けていたのが印象的でした。
「島&都市デュアル暮らしツアーズ」では、4市の魅力を引き続き発信していきます。今後開催されるDUAL LIFE SCHOOLでも、こうしたリアルで興味深い話を聞くことができます。少しでも興味がある方は、ぜひ今後のイベントにも参加してみてくださいね。