ー毎日、淡路島。ー #1 淡路島へ移住してきた理由

こんにちは、淡路市に住む時友真理子です。2016年に東京から淡路市に移住し、私は子育てをしながら自営業を、夫は会社員で、毎日淡路市からバス通勤で神戸に通っています。

ー毎日、淡路島。ー #1 淡路島へ移住してきた理由

連載をスタートするにあたり、まずは自己紹介も兼ねて私の移住話から始めたいと思います。
私が移住してきたのは2016年3月。ちょうど2年になります。

東京で育ち、東京で働いていた私はいつしか「淡路島で暮らしたい」そう思うようになり、夫婦の間でそれを口にするようになってから1年後には実際に移住していました。

もちろん、すんなりと移住できたわけではありません。不思議と色々な幸運が重なって淡路島に住むことができそうな気配がしてきたので、最後は「えい、やーっ!!」と夫婦で思い切ったというのが実際の話。

二人とも実家は東京にありますし、親も友達も残しての移住は不安というより寂しさに似たような気持ちの揺れがありました。でも新しい理想の土地で自分たちの家族をつくるんだ!という意気込みで前に進んでいた記憶があります。

結婚して7年目だけどそのときはまだ子どもがいなかった私たちは「淡路島のような環境の良いところで家族を増やせたら」という淡い期待もあったのです。

 

移住者=不審者?!

淡路島の人たちは口をそろえてみんな「なんで淡路島なんかに?」と聞いてきます。島から出ていく人が多くて困っている今、島の人は本当に不思議みたいです。そのうえ、移住してきて1年以上経ってから聞いた話では、「こんなところにわざわざ来るなんて絶対おかしい。何か変なことをして東京から逃げて来たんじゃないか」と思って不審がる人も少なくないとのこと。

そんなこともつゆ知らず、私は移住してきた理由を「おいしいから!」とのんきに答えていました。「毎日とれたての新鮮な食材で暮らせるなんて、私には夢のような生活なんです。しかも野菜だけでなく、肉、魚、卵、果物、米と一年を通じてあらゆる種類の鮮度の高いものが普通に手に入る。そしてこの景色、環境。こんな贅沢はなかなかないんですよ」と。そんなにピンと来ないな、という感じの反応が多かったように思います。

逆に「そうそう!」と好反応を示してくれた人たちは、淡路島を一度出て帰ってきているいわゆるUターン組や、神戸などで淡路島の食材を使っていて、その良さを理解している飲食店の人でした。島で生まれ育った人にとっては、当たり前すぎることなのでしょう。


移住後初のおうちごはんは、いかなごの新子とホタルイカの
パスタ。ふらっと入ったスーパーで地の旬の鮮魚が手に入り、
びっくりした記憶が(今はめったにスーパーには入りませんが)。
ちなみに、にんにくも淡路島産。

淡路島=玉ねぎだけではありません! さまざまな季節の果物も!!
こちらは淡路島産のさちのか。苺もたくさんの農家さんがいます。


淡路牛も有名ですが、猪豚(いのぶた)も負けないくらいおいしい
です! 味が濃くてジューシー。ちょっと高いけど、つい手が…。

そもそも、なんで「淡路島で暮らしたい」と思うようになったのか

最近また、「なんで移住したんですか?」と聞かれることが増え、自分でも改めて考えていました。思い起こすと、淡路島への移住に恋焦がれる以前に、「東京じゃなくてもいいな」というのはぼんやりと心の中にあったと思います。

大人になってから旅行で東京より西に行くことが増え「こっちの味付けの方が好きだ」と感じることがよくあったり、仕事などで出会う素敵だなと思う人たちに地方出身者の割合が多かったり、ということが重なって、次第に自分の中にある疑問が沸いてきました。「東京での暮らしってそんなにいいものなのか?」と。

私もずっと東京で暮らしてきたので、淡路島にずっと住んでいる人と同じように、「東京」に特別な意識を向けたことがなかったのです。東京は日本の中心とされているというのもあり、海外への憧れはどこかにありつつも、日本国内に自分にとって東京よりいい場所が他にあるかもと考えたことすらなかったのだと思います。

でもその疑問が沸くようになってから、海外で暮らすのは私にはハードルが高すぎるし、やはり日本が好きというのもあり、じゃあどこなら本当に住めるかな、という妄想をたまにするようになりました。

そんなとき、初めて神戸に旅行に行き、「同じ街の中に山も海もあるなんて!普通の生活もしながら、自然に囲まれる。私もこんな場所に住みたい」そう思ったのを覚えています。これが淡路島を選んだ自分の原点なのではないかと今は思います。

じゃあ、なんで神戸じゃなく、淡路島なのかという疑問が沸くと思うのですが、淡路島にはもう一つ、私が求めていたものがあるのです。住むところはできるだけのんびりと時間が流れて空気が綺麗とか景色が良いとか、感覚的にも心地の良い場所にしたかったのです。

私は人に淡路島を説明するときに「土地に風通しの良さがある」と表現することがよくあるのですが、まさにそれがもう一つの理由です。のんびりしている、人口密度が低い(そうは言っても淡路島の人口は15万人)、穏やかな感じ、などさまざまな言い方があると思うのですが、私としては人が健やかに暮らしていくのにちょうどいい感じとでも言うのでしょうか、山も高すぎず、平野もあって、自然も豊かなのですが、濃すぎないという塩梅が素晴らしいのです。

今までの暮らしからの反動もあったと思いますが、私には神戸はキラキラしすぎていたし、神戸に住むのはコストもそんなに東京と変わらなくなりそうだという、自分の誘惑への弱さに対する懸念もありました。

家のベランダからの景色(賃貸マンション)。
淡路島の相場からするとほんの少しだけ高かっ
たのですが(それでも東京の半分以下です)、
毎朝ここから昇る朝日を見られるので後悔はありません。


玄関を開けると目の前に広がる景色。
山側の景色は夕焼けも綺麗なのです。

淡路島の「スペース」は、私自身の「スペース」に

東京を離れてみようと思った思いのひとつには、「自分の人生をちゃんと生きたい。もっと自分の時間が欲しい」というものもあったように思います。これは移住して2年が経った今だからこそ、落ち着いて振り返ってわかったことなのですが。

東京での自分は「消費」が中心にあり、それが自分を窮屈な気持ちにさせていたと今になって思うことがよくあります。淡路島に来て、極端にストレスが減りました。サラリーマンを辞めたということもあるのですが、そんなに私はバリバリ働いていた方ではなく、きっと元同僚の人たちも「私がストレスから解放されたのは会社を辞めたからだ」なんて言ったら違和感を覚えると思います。私自身も、それは同感です。

やはり東京での暮らしは、何気ない日常におけるストレスの部分が多かったように思います。住んでいる街の人口密度の高さ、建物の多さ、電車の車内はもちろんのこと、どこに行くにもどこを歩くにも人と情報が溢れていて、隙間がない。消費を否定するつもりはもちろん一切ありません。正直、移住して最初の頃は、もっと消費から離れたい、という反動からくる思いがあり、いずれはもっと淡路島の山奥の方に住んで、自給自足に近い生活ができたらなんていう憧れもありました。実際そういう生活をしている移住者の人たちも多く、とても素敵な生活をしている人たちがいます。

でも移住して2年、私たちはその器ではない、もっと欲にまみれているということがよくわかりました。

「消費」は嫌いじゃないんです。これからも「消費」はしたい。淡路島のアクセスの良さを生かして、色々なところに旅行も行きたいし、溜まっている近郊の行きたい素敵なお店リストもひとつずつ当たって行きたいし、移住して一か月後に授かった息子にも定期的に神戸のきちんとしたレストランやホテルに連れて行ってあげたり、港町ならではの美味しい洋食屋さんや中華料理のお店に連れて行ってあげて、都会の空気も吸わせたいとやりたいことは山積みです。

でも東京に住んでいたころの自分は、何かに流されて、しなくていい「消費」、本当は求めていない無駄な「消費」までしていたし、そうなってしまいやすい環境や力がそこにははっきりとあったと思います。

淡路島に来て二年がたち、反動の期間も過ぎ、落ち着いて自分と向き合える空気感の中で暮らす日々があり、自分が本当にしたいことを選んで過ごしたいように過ごせている充足感をようやく得られています。


淡路島が誇る、西浦のサンセットラインからの夕焼け。
瀬戸内海にも面しているのは淡路島の魅力のひとつ。

我が家なりの「あきらめない、移住」をお届けします

今の私は、毎日新鮮な食材で食卓を囲み(疲れているときはコンビニや外食に頼ることはもちろん、カップラーメンだって好きですが)、毎日海と空と山の色の移り変わりをチェックし、毎日車で移動し(東京では18歳で免許を取って以来20年間全く運転しなかった超ド級のペーパードライバーでしたが)、毎日のドライブで流れる景色に今でも感動し、月に1,2度は島外にお出かけし、現在1歳3か月になった息子と、東京から連れてきたセキセイインコと、三ノ宮に毎日バスで通勤しつつ月2回~3回は東京に出張に行く夫と家族4人で楽しく暮らしています。

我が家の長女、セキセイインコの雌。今年で7歳になります。

#2からは、そんな島での暮らし方についてお届けできればと思っています。引き続き、おつき合いいただけたら嬉しいです。

この暮らし体験のナビゲーターについて

時友 真理子(ときとも・まりこ)

2016年3月に東京の中目黒から淡路市へ夫婦とセキセイインコの3人家族で移住してきました。その1か月後に長男を授かり、現在は島での子育てを楽しむ日々を送っています。

詳しいプロフィールはこちら

その他カテゴリーの記事をみる