【こだわりものづくりコース】島&都市デュアル スペシャル体験ツアーレポート 前編

淡路島を中心に、こだわったものづくりをしている方々に出会うスペシャルツアーを開催。2日にわたってアテンドした洲本市暮らしナビゲーターの富田が、その様子を2回に分けてレポートします。

018年12月1日から一泊二日で開催された【こだわりものづくりコース】島&都市デュアル スペシャル体験ツアー。淡路島でものづくりをしている4組に出会い、仕事や暮らしの上での「こだわり」を聞きながら島をめぐる2日間。新神戸駅に集合した今回の当コースの参加者は7名。さっそくバスに乗り込み淡路島へ出発です。

景色に惚れ、島へ移住したいちご農家さん

明石海峡大橋を渡ってはじめに出会ったのは、「いちご農家でジャム屋さん」という肩書の山田屋さん。2011年に島に移住した山田修平さんと優子さん夫妻が、いちごの観光農園とジャム屋さんを営んでいます。

いちご農家でジャム屋さん

農園を訪れて、まずみなさんが驚かれたのはその景色!山の中腹にあるガラスハウスからは、大阪湾が一望できます。当時は、笹やぶに囲まれた荒れ果てたガラスハウスだったそうですが、海と山しか見えないこの景色に惚れこんで、その場で移住を決めたのだとか。

きれいに整備されたハウスの中で修平さんのお話を伺いました。島に移住する前はご夫婦とも滋賀の観光農園で働いていたそうで、その時の経験をもとに淡路島で起業。見知らぬ土地に行くことや起業することに対しての心配は、少しはあったそうですが、それ以上にときめきや期待の方が大きくて、不安は特に感じなかったと楽しそうに話してくれました。

山田屋さん山田屋さん

観光農園とジャム屋をスタートしてからは、島の中で業種を問わずたくさんの方々と出会い、つながり、そこから新しい仕事を生み出しています。そのつながりの様子を、山田さんは、知人から教わったという「目線のそろう異業種」という言葉で表現してくれました。
淡路島には価値観を共有できる楽しい仲間がびっくりするほどたくさんいて、日々楽しいことが起こるのだそうです。

仲間の輪はハウスの周りにも広がり、今まで耕作放棄地だった周りの土地を地元の方々と畑にもどす活動も始まりました。甦った畑を使って、島で出会った仲間と新しい活動も生まれようとしています。

山田屋さん

次に農園からジャム屋の工房へ移動。奥さんの優子さんが作る山田屋のジャムは淡路島で大人気の商品です。参加者のみなさんもここぞとばかりにお買い物。最後はご夫婦にお見送り頂きながらランチへ向かいました。

いちご農家でジャム屋さんいちご農家でジャム屋さん

ランチ会場は東浦にお店を構える新島水産さん。貝の海賊焼きで有名なお店ですが、今回は海鮮丼で淡路島の海の幸を盛りだくさんに頂きました。

新島水産

無駄を削り落としてシンプルに、丁寧に塩をつくる

次に訪ねたのは、瀬戸内海を望む美しい景色の中で塩づくりをしている「脱サラファクトリー」の末澤輝之さん。末澤さんは明石出身。大手の外食チェーンで商品開発や調理スタッフの育成をしていた経歴の持ち主です。当時、サービス業の楽しさを感じながらも、安全・安心な食とは何かを考えていたそう。そして、身体を構成する大切な成分であり、多くの料理に使われる「塩」を作りたいと思うようになったのです。明石に近い場所で、納得のいく塩づくりができる環境を求めて、選んだのが淡路島でした。

「脱サラファクトリー」の末澤輝之「脱サラファクトリー」の末澤輝之

末澤さんの塩は徹頭徹尾、手作り。目の前の海から海水を吸い上げてろ過し、塩分濃度を上げる工程を経て、大きな鉄鍋に薪をくべながら火を調整し、何十時間もかけて炊き上げます。無駄を削り落としたシンプルな工程を、時間をかけて一つひとつ丁寧に行うのです。
塩場には大量の大きな薪がカットされて積み上げられていますが、この量を1日で使い切ってしまうのだとか。塩の炊き加減をみながら窯のどの位置にどのタイミングでいれるべきかを考えて入れていくのだとか。参加者のみなさんも薪をくべる体験をさせてもらいました。

自凝雫塩(おのころしづくしお)の薪をくべる体験自凝雫塩(おのころしづくしお)の薪をくべる体験

窯の中で煮詰められ、仕上げ段階に入っている塩を、ザクッとシャベルですくい上げて試食させてもらうと、参加者のみなさんが口をそろえて「美味しい!」。しかし、末澤さんいわく、これでもまだ仕上がっていないのだとか。

自凝雫塩(おのころしづくしお)

末澤さんは、塩づくりの工場や製造するための設備は、知人の協力も得ながら自分で作っています。最近できた海水の塩分濃度を上げるための設備を見せてもらうと、アスレチックのように木材が組み上げられていて、その中に吊るされている細かな網を上から下に海水が流れ落ちます。その間に日光と風で水分を蒸発させて塩分濃度を上げるのです。ここから見る景色もまた絶景でした。

自凝雫塩(おのころしづくしお)自凝雫塩(おのころしづくしお)

末澤さんが作られた塩は、自凝雫塩(おのころしづくしお)という商品名で販売されています。淡路島はもちろん、全国の自然食品を取り扱うお店に卸すことも多いそうです。参加者のみなさんも、声を揃えて「買ってかえりたい!」。無駄を省いてシンプルに、かつ丁寧に。自分の手で一つひとつ作りあげるその姿は、まさに「職人」です。

淡路島に着いてまだ半日ほど。ここまでですでに出会った2組の濃いお話を聞いて頭や胸がいっぱいになりながらも、最後のスポットに向けて塩場をあとにしました。

人が集まる窯元樂久登窯

最後に訪れたのは樂久登窯(らくとがま)さん。8年前に神戸から淡路島に移住した陶芸家の西村昌晃さんの窯元です。淡路島の西海岸沿いから10分ほど山側に車を走らせた所に、緑に隠れた工房があります。

樂久登窯(らくとがま)樂久登窯(らくとがま)

工房とギャラリー、カフェが併設されたスペースは、西村さんの祖父母が住まわれていた古民家を改装して作ったそうです。西村さんのお姉さまが運営されるカフェは、観光客をはじめ地元の人たちも多く集まるスペースになっています。ギャラリーでは西村さんの作品を見ることができ、その場で購入することもできます。

西村さんが工房の中を案内してくれました。中では西村さんのお弟子さんが黙々と手を動かし、器を制作しています。樂久登窯の器は島内外の飲食店からの注文も多いそうです。

窯元を立ち上げた頃は、精力的に島の外で展覧会などを開催していましたが、しばらくすると樂久登窯に沢山のお客様が足を運んでくれるようになり、島外に出る必要がなくなったそうです。料理人をはじめ普段出会えないような面白い方々が多く訪れるようになり、ずっと同じ場所にいながらも、訪れる方々からの刺激を受けて、西村さんの感度も落ちることがなかったそう。ただ数年前に結婚して家族が増えたこともあり、そのスタイルも考え方もどんどん変わってきていると話してくれました。たとえば、最近ではコーヒーの焙煎をされている奥さまと一緒に、器とコーヒーを合わせて提案して、もう一度、島外での展覧会を開催するようになっているのだそうです。

最後に、「山小屋キッチン」と名付けられた場所を案内してもらいました。木とブロックでできた、こじんまりとしたかわいい山小屋です。ここでは西村さんのお母さまがお弁当を販売しています。もうすぐ、小屋の下には、地元の方に造成をお願いして新しい窯が設置される予定だそうです。樂久登窯と並んで、その場所のすばらしさと西村さんの次々と溢れ出る発想に、参加者のみなさんも驚きの表情でした。

ご家族や地域の人、仕事を通して出会う人、そしてなにより自分自身といつも向き合って、最新のご自身とその考えを、ものづくりや空間づくりにアウトプットしていると感じられる時間でした。

この後は別のツアーコースの参加者と合流し、淡路島のこだわり料理人によるケータリングを一緒に楽しみました。その様子は「【教育移住コース】島&都市デュアル スペシャル体験ツアーレポート 後編」をご覧ください。

この暮らし体験のナビゲーターについて

富田祐介

お住まいのエリア:洲本市
職業・所属など:企画者・シマトワークス代表

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